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MSXturboR(新CPU:USO800搭載)

Sorry, this article is written as a joke:)

 MSXturboR(エム・エス・エックス・ターボアール)は、パソコンの国際規格であるMSXの一つ。

目次


概要

 1990年に規格が策定されたMSXturboRは、新開発のZ80バイナリ互換高速CPU「R800」と従来のグラフィックチップV9958を劇的に高速化(およそ20倍)させた新VDP「V9909」を組み合わせることにより、既存のMSX用ソフトウェアを1バイトも書き換えることなく高速に動作させることを可能とした。

FS-A1GT

 1990年10月には、松下電器産業(現パナソニック)より、最初のMSXturboR規格マシンとなる「FS-A1GT」(以下、A1GTと省略する)が発売された。定価は89,800円(消費税を含まない額)であった。

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《写真1》 MSXturboR規格パソコン FS-A1GT

 A1GTの「GT」は「GUI Turbo」の略とされている。メインメモリを512kB搭載したほか、GUIソフトウェア「MSXView」をROMに搭載し、MSXViewの操作に必要なマウスを標準装備とした。
 32ビットパソコン市場においてもGUIが珍しい存在だった当時としては、本体を購入するだけでGUIとマウスオペレーション環境が手に入ることは非常に画期的なことであった。

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《写真2》 MSXViewの元となったHALNOTE

 MSXViewは、HAL研究所が1987年にMSX2向けに開発したGUI「HALNOTE」をMSXturboR向けに転用したものであった(従来のHALNOTE用のアプリケーションもMSXViewでも動作させることができた)。
 MSXturboRの「従来のMSX用ソフトウェアをコードを書き換えることなく高速に動作可能」という利点を生かし、HALNOTEのMSXViewへのバージョンアップはMSX-DOS2への対応など最小限のカスタマイズで済んだため、MSXturboRの販売価格を抑えたままMSXViewの標準添付を可能とした。
 処理速度的に非力なMSX2上ではとても実用に堪えなかったHALNOTEであったが、MSXViewとしてMSXturboR上で動作することによって、ようやく本来の実力が発揮されたといえる。

 MSXViewはROMで供給されたため、同じくROMで供給されたワープロソフトや日本語入力システムとともに、軽快な操作環境の実現に寄与した。
 当時は、一般的なビジネス用途向け32ビットパソコン(NECのPC-9800シリーズなど)の市場においてもハードディスクドライブがほとんど普及しておらず、ワープロソフトや日本語変換システムがフロッピーディスクで運用されていたため、MSXturboRの操作応答性がビジネス用途パソコンのそれを上回るという逆転現象が発生した。

 MSXView用のソフトウェアとして、表計算ソフト『ViewCALC』、ドローソフト『ViewDRAW』などがMSXturboRと同時に発売された。また、MSXturboRに内蔵されたワープロソフトについても、これらのMSXView用ソフトと連携させるための改良が加えられた。
 いずれのソフトウェアもGUIによるマウス操作が可能であった。

 MSXViewおよびそのアプリケーションに対して、既存のMSXユーザーの目は冷ややかであり(彼らがMSXを所有する目的は、ホビープログラミングか、そうでなければパソコンゲームのプラットフォームとしてであった)、彼らはMSXturboRを単に速度が速くなっただけのMSXとしか捉えなかった(もちろん、ホビープログラマは処理速度の高速化の恩恵に与れたし、それまでのMSXのスペックでは移植が不可能であった他機種向けゲームがMSXturboRに移植される事により、MSXをゲーム機として利用する層もその恩恵を享受することができた)。
 しかし、実用ソフトが快適に動作し、しかもマウスによるGUI操作が可能となったMSXturboRは、『速い・安い・うまい』を合言葉に松下とアスキーが行なったキャンペーンにビジネス誌が乗りかかる形となり、一大センセーションを巻き起こした。

 MSXFDDで採用されていたMSX-DOSフォーマットが、もともとビジネス用途パソコンで使われていたMS-DOSフォーマットと互換性があったことに加え、ビジネス用途パソコンのFDDが5インチから3.5インチに移行しはじめていたことも、元々3.5インチFDDを採用していたMSXに味方した(ビジネス用途パソコンでは2HDディスクが使用されていたが、MSXでフォーマットした2DDディスクの読み書きが可能であったため、コンバータソフトなどを用いずとも相互にファイルの交換が可能であった)。

 当時、一般的なビジネス用途パソコンと必要なソフトウェア(ワープロソフトなど)一式を揃えようとすると、フロッピー運用であっても一般的なサラリーマンの月収の2倍程度の投資を必要としたため、個人でビジネス用途パソコンを購入することには様々な制約があった。
 ところが、MSXturboRで同じ環境を揃えた場合、ビジネス用途パソコン一式の1/3程度の投資で収まったため、MSXturboRは従来のMSXユーザーの大多数を占めたホビーユーザーだけでなく、それまでパソコンの購入をためらっていたビジネスマンや中小・零細企業へ一気に広まった。
 このため、それまでMSXを『おもちゃ』などと呼称して見下していたビジネス用途パソコンユーザーが、会社ではビジネス用途にMSXを使い、自宅ではビジネス用途パソコンをホビー用途に使うという逆転現象が発生し、そのようなユーザーが悔し紛れにMSXturboRを『プアマンズMac』と呼ぶことがしばしば見られた。

 A1GTはホビーユーザーに限っても10万台程度販売され、縮小傾向にあったMSX市場において久々のヒット作となった。なお、同時期にX68000シリーズの累計販売台数が10万台を突破している。

FS-A1STとFS-A1BT

 A1GTの成功に気をよくした松下は、1991年10月に新機種「FS-A1ST」「FS-A1BT」の2機種を同時リリースした。

FS-A1ST

 FS-A1STの「ST」は「Standard Turbo」の略とされている。
 A1GTからMSXViewを含む添付アプリケーションおよびA1GTでは標準添付であったマウスを省略したものであり、ホビーユーザーをターゲットとした廉価版MSXturboRの位置づけであった(内蔵メモリなどハードウェア上のスペックに差異はない)。定価は74,800円(消費税抜き)であった。

FS-A1BT

 FS-A1BTの「BT」は「Business use Turbo」の略とされている。
 メインメモリが1MBに増加し、2DDフロッピーディスク対応FDDを2台搭載(A1GT・A1STにも基板上に未使用のFDD接続用パターンが存在し、それを利用してFDDを増設するユーザーもいた)で発売された。MSX史上初のメガバイト単位メモリ搭載機種となったほか、RS-232C端子、MIDI端子、アナログRGB15ピン端子を標準装備した。
 RS-232C端子を搭載したことでモデムを接続可能となり、パソコン通信のほか、株式投資、馬券のオンライン購入、オフィスのFAX自動送信ソフトなどに利用された。
 アナログRGB15ピン端子にはアップコンバートされたビデオ信号が出力(インタレースモードにおいては424ライン)されており、当時一般的だったPC-9801用モニタを接続することで、クリアな画面表示を実現した。
 定価は128,000円であり、MSXとしては久々の10万円を超えた機種となった。なお、当時EPSONから発売されていたPC-9801シリーズ互換機「PC-286C」の定価が168,000円であった。

バージョンアップアダプタ

 A1GTとA1STをA1BT相当にバージョンアップする拡張アダプタ「μ・PACK」がビッツーから発売された。
 本アダプタにより、512kBのRAM(本体のRAMと合わせると1MBとなる)、RS-232C端子、MIDI端子を増設することができた。価格は39,800円であった。
 アナログRGB15ピン端子と増設FDDは搭載されていないが、これらが必要でないユーザーは、A1STとμ・PACKを組み合わせることで、A1BTよりも低廉な価格で同等品を手に入れることができた。

オンラインサービス

 1992年には既存のMSX向けオンラインサービス「THE LINKS」の上位版として、MSXturboR専用のオンラインサービス「Turbo Links」が開始された。
 サービスの利用には、モデムの他に専用の通信ソフトが必要とされたが、グラフィカルな画面でオンラインサービスの利用が可能であった。
 ユーザーは Turbo Links 上で自分の分身となるキャラクターを操作し、電子掲示板の読み書きやチャットのほか、コナミの協賛によるオンライン対戦ゲームを行なうことができた。

 ゲームのソフトウェアは、オセロや将棋などの小規模なものはオンラインで提供されたが、グラフィックなどを含む「重い」ゲームはフロッピーディスクやROMカートリッジで供給された。
 特に、Turbo Links 上のクイズゲームでは、1992年の段階でクイズ問題の追加とオンラインによる対人戦を実現しており、現在まで続くオンライン対戦型クイズゲームの嚆矢となった。
 クイズ愛好家の間には、視聴者参加型クイズ番組の減少による不満が鬱積していた時期でもあり、このゲームのためだけにA1STとμ・PACKを購入するクイズマニアが少なからずいた。
 当時は定額制のネット接続サービスが存在しなかったため、特に地方のユーザーにとっては通信料の負担が大きく、「みかか破産」(NTTに高額な電話代を請求され、支払えなくなること)するユーザーがあらわれて問題となった。
 アーケード用クイズゲームクイズマジックアカデミーアーケード」シリーズに「アーケード」と付くのは、オリジナル版が Turbo Links 上で運営されていたことの名残りである。


 この「MSXturboR」を書こうとした人は途中で寝てしまいました。続きは自分で執筆してください(PJ コンピュータ / Portal:コンピュータ)。

追記

 MSXパソ通ができる環境があったとして、本当にMSXユーザーの大半がパソ通に移行できたかどうかは未知数ですが、MSX・FANもゲーム攻略記事がなくなった頃から『パソ通天国』の記事を拡充したりしてパソ通関係に力を入れてたので、間口は狭くはなかったんじゃないかと思います。
 そうなると、MSX・FANのパソ通移行も実現してたかもですね。

 この先は、VDPにV9990を採用し、R800が持つ24ビットのアドレスバスをフルに使った真の16ビットパソコンを目指したのか、それともマッパーRAMの枠の中で行き着くと ころまで向かおうとしたのかはわかりませんが、Windows95の黒船の前に、他の国産アーキテクチャと同じ運命を辿るのは避けられなかったでしょう……。

 いっそガラバゴスを目指す方向もありますが。

追記(2021年)